六塵
東京都や世界の各都市では、外出の自粛が
長引きそうな状況。
これ以上拡大しないことを心から願います。
それにしても、今回はパンデミックだけで
なく、経済や環境の問題、都市のありかた、
ひいては自己のありかたを問われているか
のようです。社会、自己の本質に目を向け
るようにと、起こるべくして起こったのか
なと思ったりもします。
このようなときだからこそ、静かに坐って
臨書する時間は、精神を鍛え洞察する力を
身につける一助になるのではないでしょうか。
今は、王羲之『集字聖教序』を臨書中ですが、
気分転換に本歌である楮遂良『雁塔聖教序』
もあわせて書いてみました。玄奘三蔵の功徳
を称える「六塵を超え迥かに出で」を半紙に
六字書き。
六塵とは、色・声・香・味・触・法の六境。
『声字実相義』のなかで空海は、それらは
感覚によって認識され、文字によって象徴
される性質をもつと説いています。
あるがままの文字をくり返し見て書く臨書。
文字をじっくりじっくり見て、くり返し書
くようになると、今まで見ていたけれども
見えていなかったところ、その文字の本質
までもが、より見えるようになるというよ
うに、臨書とは六塵に目を向けることでも
あるといえます。