秋の音
夕べの草むらに虫の音が響きわたる頃。
今年の夏に金沢にある室生犀星記念館を
訪れてからというもの、その詩にいっそう
魅了され、東京書作展の出品作品を犀星
の詩と決め、繰り返し書いています。
「幽遠」は、犀星文学の本質にかかわる
愛用語だったようですが、ちょうど今書
いている詩文のなかにも使われています。
遠く深く、知りつくせないことに想いを
はせる情操的な思考と言葉のつながりに
心引きつけられます。
純粋で美しく力強く、そこにはやさしさ
と愛が感じられる、いい詩は歳月を経て
もさびつかないということを、犀星の詩
から感じます。
そのようなことを思いながら書作する夜、
虫の音ではない、秋の音ともいえぬ音ま
できこえてくるようです。