月草
朝夕の風に秋を感じるようになりました。
室生犀星の生命力ある詩は、かわりゆく
外側への反応と、かわらない内なる部分
への深さと静けさがあり、それに対する
確固たる姿勢が美しい。
そして、雑草の中に繁殖する露草の風情
にも同じものを見ます。可憐なる月の藍
に、たくましさをも感じます。
夏から秋へと、移りかわる季。
『月草』
秋はしづかに手をあげ
秋はしづかに歩みくる
かれんなる月の藍をうち分け
つめたきものをふりそそぐ
われは青草に座りて
かなたに白き君を見る
室生犀星

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