喫茶去
寒露をすぎ深まる秋を感じる頃。
10月、茶道では名残り月。
5月から半年のあいだ、使いなじ
んできた風炉との別れを惜しみ、
昨年の口切りから使ってきた茶が
残りわずかとなってきたことへの
名残りを惜みつつ、侘びた情趣を
尊ぶ取り合わせとなります。
茶道のお稽古に通っていたころ、
季節によって変わる道具の取り合
わせや趣向、細やかな心づかいに
触れるたび、茶道の高い精神性に
どんどん引き込まれていきました。
そろそろ寒さを感じる名残の月に
は、客に火のあたたかさを近づけ
るため、勝手付に置いていた風炉
を畳の中央へと移動させ、逆に水
の入った水指を勝手付へと遠ざけ
る「中置」にもいたく感心したも
のです。
いつもの蕎麦屋で掛けられていた
色紙から、茶道に熱中していたこ
ろを思い出し、深い覚りのはたら
きは、日常のなかにあるのだとい
うことを思い知るのです。