寳
泉屋博古館で、特別展『金文』が開催されている
と知人にすすめられ、上野での勉強会の帰りに立
ち寄りました。
三千年程前に造られた青銅器80点ほどの展示。
そこに鋳込まれた金文を、興味深く鑑賞してきま
した。金文の字形は、時代がくだるに伴い、変化
が見られますが、変わらないのは、そこに託され
た人々の思いです。それは、いくつかに見られた
「子々孫々永寳」の文字から感じられたことで
す。子孫の続くかぎり末永く宝とするようにと、
後世へと引き継いでほしい、末永く繁栄してほし
いという願いが、顕然と感じられました。
そのような不変の思いは、三千年経た今、現代を
生きる私たちの中にも宿っているということ、
青銅器の重厚で冷気ただよう道具だけが並ぶその
展示室のなかで、そこに関わった人々の思いを深
く感じました。
また先日、教皇フランシスコが訪日され、長崎、
広島での演説に、深い感動を覚えたばかりです。
子孫の続くかぎり、末長く宝としてゆかねばなら
ない、引き継がなくてはならない、その真実の
『宝』とは何なのかを、ゆるぎない姿勢で示して
ゆかれました。
11月もあとわずか。
銀杏の落葉があちらこちらで散り敷いています。
ちょうど今、東京都美術館では、東京書作展が
会期を迎えています。
今回は、真珠のような光沢のある黄色の紙に、
室生犀星『夜』を、淡墨で兎の髭を使い書いて
出品しています。ぜひお出かけください。