訪れ
ブログのタイトルを、あえて「秋の○」
とした9月は過ぎ、訪れた10月。
秋の深まりは美しく寂寥を伴うけれど、
一年の中でもっとも好きな季節です。
今日も、いろいろ書きました。
その中のひとつに、光明皇后『楽毅論』
の臨書があります。毎月の一般競書課題
のひとつである細楷。
『楽毅論』は、三国時代、魏の夏候玄が
作った文章を、王羲之が小楷で書いたも
ので、羲之の楷書作品のなかで、もっと
も評価が高いとされます。
皇后が中国から舶載された、それを臨書
した44歳のときの書。強く勢いある運筆、
生気あふれる変化に富んだ用筆からは、
皇后の気質までも感じられるようで、
臨書するたび気持ちが高まり、楽しく、
学びがいがあります。
末尾に藤三娘と書かれているのは、
藤原不比等の第三女として誕生した皇后
の書であるということを示します。
奥書きには、平天十六年十月三日とあり
ますので、なんと、1274年前の今日に
書かれたもの。
大人の書の手本は「古典」が基本。
今から千年以上も前に書かれた書の名品
を臨書することで、書の本当の美しさや
優れた筆法を知り、身につけることがで
きます。
活字に慣れてしまった現代人には、古典
の良さがなかなか理解できないかもしれ
ませんし、臨書は根気のいることでもあ
りますが、それを繰り返すことで、その
価値に気がつくときがきっと訪れるはず。