あおによし
青丹よし奈良にきています。
奈良といえば墨、書家といえば杉岡華邨。
というわけで、古梅園の後に杉岡華邨美術館
へと足を運びました。
数年前に松屋銀座で開催された、生誕100年
を記念しての展覧会では、その巧みな表現の
かな書にすっかり魅了されたことを思い出し
ます。墨の濃淡、文字の太細、行間や行頭
など、変化に富んでいて、それぞれが響き
あい調和しあう緻密な表現を、あらためて
鑑賞してきました。
また、ちょうど春日大社と興福寺の古儀
『薪御能』が執り行われていましたので、
そちらへも足を運び、壮麗で深い余情の
ある日本の伝統美に誘われました。
奈良が都だったのは80年ほど。その間、
遣唐使が様々な文物を大陸から持ち帰り
ました。そのなかに、漢字や書があり、
史書や文学が生み出された重要な歴史を
もつ奈良ですが、なんというか、飾り気
のない落ち着いた特質があります。
それには、あの春日大社の鹿たちも、
ひと役かっているように思うのだけど、
じつは内に秘めたる、さを鹿の闘争心が
あるのでは?!と、そんなことに思いを
めぐらせ、奈良の夜は更けてゆきます。
木がくれて 争うらしき さを鹿の
つのの響きに 夜はくだちつつ 會津八一