湯桶よみ
春突風(はるトップウ)の一日。
今回はあえて『湯桶よみ』で。
このことばもたくさんあり、いつも何気なく
使っていますが、書に関することばであれば、
米偏、手偏、口偏など、漢字の偏は、ほぼ
湯桶よみになるかと思います。
それに、墨字(すみジ)。
ただし、こちらは 音+音で 墨字(ボクジ)
とも読みますので、湯桶よみ限定ではない
ですが、前者が一般に書く文字、後者が墨で
書いた文字を示します。
ところで『湯桶』とは、蕎麦屋へ行くと蕎麦湯
を入れた柄と蓋付きの片口のことですが、茶事
では蕎麦湯ではなく、炊いたご飯の釜底にでき
たお焦げを湯の子にしたものに湯をそそぎ、
懐石の終盤に香の物と一緒に出されます。
客はひと口だけ残しておいたご飯が入った飯椀
と、からになった汁椀にもそれをそそぎ、
香の物でお椀を洗い清めながらいただきます。
客が自らの器を清め、自分の腹中に流し入れる
ことは、禅門の食礼に倣った折水の尊さの自覚
であると、教えられたことを思い出します。
食礼に倣った懐石のマナーは合理的にであり、
また精神性も含めて、日常や生活の中に取り入れ
たいことがたくさんあります。
そういえば、湯桶は ゆおけ とも読み、寒い時期
の茶事で、湯を入れ蹲で手を清めるときの道具に
なったり、お風呂の湯をくむ桶をさしたり、
いくつかの語義をもつことば。
表意文字のなせるおもしろさです。