子どもの文学
読書の秋。
だれにでも、大切にしている本がある
とは思いますが、私にとっては 、
「子どもの名作全集」50巻。
幼少のころに父が揃えてくれ、本棚のなかに
ずらりと並ぶ真っ赤な装丁のそれを大事に読ん
だものです。今でも私の本棚に大切にしまって
ありますが、それを見るたびに、時間を忘れて
読んだあのときを懐かしく思い出します。
大人になると、子どもの文学からはすっかり
遠ざかってしまうものです。
「わずかでも時間を割いて子どもの文学を読んで
みたら、ストレッチで強ばった体をほぐせるよう
に、現実の暗さのなかで強ばったり、忘れられ
たりしている理性や感情、想像力、空想力など
がもみほされて活性化するのではあるまいか。」
これは、児童文学研究者として英語圏の優れた
作品や評論の翻訳に永年たずさわってこられた、
猪熊葉子先生のご著書 からの一節。
出版されたばかりの
「大人に贈る子どもの文学」より。
ご縁があり親しくさせていただいておりますが、
光栄にもご恵贈にあずかりました。
先生にお会いするたびに感じることは、気高く
生きることの美しさ、自分の信念を貫きとおす
ことの潔さ、さまざまな視点を私に与えてくだ
さいます。
「おおかたの大人たちにとって、子どもの文学を
読む、などということはたぶん新しい経験だろう。
しかし、新しい経験というものは、人の視野を
広げてくれるもの、たとえつかの間であっても、
希望をあたえ、幸せを味わわせてくれるもとだと
いえるのではないだろうか。」
そうよ、せっかくの読書の秋だもの、大人の文学
もいいけれど、わずかでも時間をさいて
「子どもの名作全集」ひっぱり出してみよう。
強ばった体がもみほぐされ活性化されるように。