いき
いよいよ長期に及ぶマスク生活、どうしても呼吸
が浅くなってしまうことが気になります。
命を養う上で何より大事な呼吸。心身への影響が
少なからずあるであろうことを懸念してしまいま
す。だからこそ、あえて呼吸に意識を向けること
が必要だと感じ、数年前に買った『呼吸の本』、
あらためて読み返しています。呼吸法が書かれ、
実践しやすいようにCDが付いている著書。
購入時、素早く楽しく読了したものの、付属CD
をかけての実践まではいたらず…、その呼吸法が
いったいどのようなものなのか、まったくわかっ
ていなかったことに今気がつくありさま。(苦笑)
この呼吸法は、詩人の谷川俊太郎さんに長年 呼吸
の指導をしておられる、呼吸家の加藤俊朗さんの
メソッド。呼吸法は文字どおり吐いてから吸うと
ころが深呼吸との違いなのだそう。
理想は静かで深く長い呼吸。
これは、書道においても同じ。長く吐きながら
書き、なるべく短く吸い途切れないように書く。
長く吸ったほうがよさそうに思うけれど、短い
ほうが酸素交換効率がいいらしいのです。
ただ、マスク生活では思うようにならないときも
あります。そこでそれに対応できる強靱な呼吸を
手に入れなくてはと思うのです。そのためにもい
まいちど呼吸に意識をむけなくては。意識すれば
おのずと呼吸は変わり、それにより心身も変わる
はず。
粋に生きるため生き生きと息をしていきたいもの。
息
風が息をしている
耳たぶのそばで
子どもらの声をのせ
みずうみを波立たせ
風は息をしている
虫が息をしている
草にすがって
透き通る胎を見せ
青空を眼にうつし
虫は息をしている
星が息をしている
どこか遠くで
限りなく渦巻いて
声もなくまたたいて
星は息をしている
人が息をしている
ひとりぼっちで
苦しみを吐き出して
哀しみを吸いこんで
人は息をしている
谷川俊太郎
詩集『手紙』1984年より