秋の風
十月も末のころ。
庭の柿の木は果実をみのらせ、色づい
た葉が、その使命を果たしたかのよう
に風のまにまに散り落ちています。
吹く風はさわやかでも、どこかものさ
びしくひっそりとし、日はいつもと変
わらず差してはいるけれど、秋は静か
に深まり凋落の情趣を感じます。
その情趣に人の世と人の一生をかさね
つつ、今月初めに他界した伯父の弔問
へと富山まで出向いた日曜日。
秋の風に寂寥の心持ちを覚えるのは今
も昔も同じ。
『おくのほそ道』にも、巡行のなかで
ちょうど差し掛かった北陸の地で詠ん
だ秋の風がいくつか詠まれています。
